こんにちわ。亀足隊長です。
久々に面白い本を見つけました。
奥秩父は両神山の麓に繰り広げられる、人間と狼の葛藤のストーリーです。
実際、地元で犬神や山犬ともよばれ伝説や生存説の多い「ニホンオオカミ」が題材となれば、不肖小生が読まないわけにはいきません。
そして奥秩父は、よく知る大好きな山域です。
情景がリアルに浮かぶので思わずストーリーに引き込まれ、一気に読みあげてしまいました。
「WOLF」柴田 哲孝
2017年
KADOKAWA
文庫: 496ページ

BookWolf

ノンフィクション作家・有賀雄二郎のもとに、林野庁の埼玉環境保全担当から突如連絡が入った。奥秩父の両神山の麓に“山犬”らしき大型動物の群れが徘徊しているという。息子の雄輝と共に現地に向かった有賀は調査を開始。カナダの大学で森林科学を学ぶ雄輝は、被害の様子をみてニホンオオカミではないかと仮説を立てる。次々に人を襲い始めた“山犬”に危機感を抱く2人は捕獲作戦に協力、正体に肉薄するが…。
「BOOK」データベースより

ニホンオオカミは、明治38年に奈良で捕らえられたのが最後の生息情報で、レッドリストによって絶滅種とされています。
しかし、真偽のほどは分かりませんが奥秩父などで目撃情報なども寄せられていて、不肖小生は現代のロマンを感じています。
それが犬神信仰・神話と繋がって、魅惑の奥秩父が大好きな由縁ともなっているのです。

そんな小生がこの小説「WOLF」にハマらないわけがありません💦
ネタバレはしません。さぁ、両神の嶺に果たしてニホンオオカミはいるのでしょうか!?
著者の柴田 哲孝氏も随分と取材をされたようで、実在である動物学者の今泉吉典博士や「ニホンオオカミを探す会」の八木氏も作中で紹介されています。
実際の様々な説を編み合わせ、オオカミの生態を想像しながら物語はグイグイと進んでいきます。

昨今の日本の山では、シカやイノシシ、サルなどが異常に増え、農作物の食害のみならず森の植生が瀕死の状態にあるといいます。
昔、尾根でよく見たヤナギランなんか殆ど食べられちゃいましたものね。
また猟友会による害獣の駆除計画も、ハンター高齢化のために、ままならならないとよく聞きます。
そこで頂点捕食者となる「ハイイロオオカミ」を大陸から連れてきて、再導入を主張する団体もあらわれました。
更にクローン技術で「ニホンオオカミ」を復元しようとする動きもあると聞きます。
確かにニホンオオカミの絶滅によって、頂点が空位となってしまった現在の日本の生態系は、極めて異常な状態だと思います。
しかし、人間が壊した自然体系をアンチ自然で補うのでしょうか・・・
そして、人間の罪深さを将来にも継続していくのでしょうか・・・
この小説「WOLF」は、ニホンオオカミを通して、そんな我々へのアンチテーゼであると思えてならないのです。
もしよろしければ、ご一読を。

WOLF (角川文庫)
柴田 哲孝
KADOKAWA
2017-01-25