2016年7月2日に登った記録です。

左から藤尾山、犬切峠、二本楢、石保戸山の小連山
笠取山方面から

160702石保戸01

こんにちわ、亀足隊長です。
今年ももう七月・・・
暑い夏がやってきます。
不肖小生の奥多摩徘徊はシーズンオフ。
少しでも標高を上げて蒸し暑さから逃れたいものです。
昔は北アルプスなど一万尺をめざして歩くようにしていたのですが、リハビリトレイルを実践している小生にはまだムリ。
奥秩父山塊あたりが精一杯です。
かといって奥秩父をバカにはしていません。
毎年、夏が終わって車道が凍結するまでは必ず歩いていた大好きな山域です。
今年の奥秩父あるき初めは、これまた小生が大好きな防火帯の尾根を持つ「石保戸山」(いしやすどやま)にしました。
笠取山の南方ににあり、管理されていないという意味ではバリエーションの山です。
久しぶりの奥秩父にワクワクしながら落合から林道に入り、高橋の集落に車を停めました。

◎歩いたルート
160702石保戸02

◎亀足コースタイム(休憩は含んでいません)
  あくまでも小生の足弱+撮影ペースなので、一般タイムとは異なります。

一之瀬高橋<5分>旧道入口<35分>犬切峠<5分>新犬切峠<45分>二本楢<10分>指入峠<50分>石保戸山<10分>防火帯末端<20分>踏み跡分岐<10分>林道<45分>一之瀬高橋
Total=3H55M

◎距離9.0km 累計標高差(+)655m、(-)655m

高橋集落から石保戸山(1672.8m)へは、廃道となった古の旧道を伝って犬切峠(いぬきりとうげ)に上がり、防火帯の尾根を拾って向かうことにする。
犬切峠は、青梅街道落合から一之瀬方面へ向かうには越えなくてはならない峠である。
その昔、一之瀬一帯の水源域へは、塩山から犬切峠を超えて入るルートが普通であった。
このあたりは16世紀に甲斐武田氏の金山開発の地であり、集落のルーツはそこにあるという。
犬切峠から柳沢川をはさんだ南側には、一時代を築いた黒川金山が存在している。
明治の時代になっても不肖小生の心の師、小暮理太郎・田部重治らが幾度も犬切峠を超えて奥秩父主脈へ入った。
そして石保戸山(1673m)は、その犬切峠を抱えた小さな連山の一つである。
一之瀬あたりから眺めても存在感がある藤尾山の横に控えている地味なピークではあるが、稜線を拾っていくと倉掛山から柳沢峠へと続く多摩川水源域最奥の一帯にある。

青梅街道から高橋川沿いに程なく走り、犬切峠への分岐を右に分けた高橋集落の路肩に車を止めさせていただく。
車を降りて身繕いしていると、軽トラ2台が通りかかる。
「こっちは笠取山じゃないよ。」
「ええ、犬切から石保戸に登ります。」
「ほぉ、気をつけてね。」
うむむ、変わった人に思われたようだ。
そりゃ石保戸をメインに登る人は少ないだろうな。
160702石保戸03

歩きはじめは車道を少し戻って、先程の分岐を犬切峠の方に曲がる。
間もなく左手に鳥居が見えてくる。
この山の中で、静かな威厳を持って佇む鷄冠神社である。
そう柳沢川を挟んだ南方、黒川山にある鷄冠神社の里宮なのである。
この集落と金山開発の由縁を強く感じさせてくれる。
神社を越えると右手に踏み跡が現れる。
犬切峠へと続く旧道の入り口。今は廃道となっている。
足を進めていくと、思ったより広い廃林道がなだらかに続いている。
ここを古の登山家たちが越えていったのであろうか。
緑の枝がかぶったトンネルは続く。
160702石保戸04

徐々に標高を上げ、源頭的なところを巻くようにとなると、おもむろにヤブが行く手を塞ぐ。
むむ?
いくら廃道になったとはいえ、多少は里の人などが利用しているかと思っていたが、どうやらほとんど利用されていないようだ。
スズタケの薄くなっているところを見定めて、ほんのちょっと藪漕ぎをすると、すぐにブッシュ帯を抜け出した。
160702石保戸05

なおも、なだらかに山腹を絡んでゆくと舗装路に飛び出す。
犬切峠である。
木々が伸びていて、いまや展望は利かない。
古の登山家たちは、汗を拭ってカヤトの広がる一之瀬の集落を見下ろし、行く手の大きな唐松尾山や竜喰山を眺めたのであろう。

「犬切峠」なんとも印象的な名前である。
言い伝えによれば・・・塩山から帰ってきた一ノ瀬在の忠兵衛という男が、 この峠で陽暮れてしまい獣に襲われる。
忠兵衛は夢中で刀を振り回して追い払うが、気がついたらそこには狼の尻尾が落ちていた・・・
以来、「犬尾切峠」という名がつき、それが短く発音されて「犬切峠」と呼ばれるようになった。
瓜生卓造氏の説である。

犬切峠から車道を300mほどたどると新犬切峠に着く。
ここは新しく開削され、高橋・一之瀬間のみならず東西に伸びる林道の要となっている。
駐車場も整備されていて、一之瀬の盟主「藤尾山」にはココから取りつくことができる。
石保戸山へは、尾根が切り落とされたところに立つ「撃ち急ぎをするな!」という物騒な看板の横から取りつく。
160702石保戸06

ほんの数メートルを登って尾根筋に乗ると、そこは打って変わって伸びやかな防火帯の尾根。
今までの森歩きから一気に開放され、気分も晴れやかになってくる。
不肖小生は、昔から防火帯歩きが大好きなのである。
また何の木であろうか、大きな倒木がモニュメントのように横たわっていたりと、このトレイルは飽きることがない。
160702石保戸07

鼻歌でも歌いたくなるような気持ちで登っていく。
こんなに素晴らしいトレイル、あまりにもマイナーで知られていないことが残念でもあり、また誰にも教えず独り占めをしたくなる気持ちも覚える。
振り返れば藤尾山の向こうに黒川鷄冠山が見える。
しかし地図もなく道も薄い時代に、金山のためとはあれ、よくこんな山奥を開拓したものだ。
160702石保戸08

トレイルは飽くことなく続く。
なんと蕗の藪漕ぎをするとは思わなかった(笑)
春に来れば、嫌というほどフキノトウを持って帰れるな。
160702石保戸09

石保戸山手前の1582mピークあたりが二本楢と呼ばれるところ。
ミズナラの巨木が佇み、周囲の石は柔らかい苔に包まれ、幽玄感ただようスポットである。
せっかくなのでココで一本とることにする。
巨木や苔と一緒に、静かな時間を過ごす。
とてもいい山なのである。
160702石保戸10

二本楢から一旦標高を落とすと、石保戸山との鞍部に指入峠がある。
ここには、新しい豪華な林道が犬切峠から続いている。
このあたりも水源林ではなかったかな。
なんの目的で開発されているのだろう。

指入峠を見下ろす。その向こうには石保戸山へと尾根が続く

160702石保戸11

指入峠からは正面の少ピークを右に巻いて石保戸山への尾根に乗る。
防火帯の防火帯はまだ続く。
この初夏の季節に太陽が降り注ぐ明るい尾根は、なかなか気持ちのよいものだ。
逍遥気分で登っていくと、防火帯一面の緑と行き当たった。
ワ、ワラビではないかっ!
目の前は一面ワラビの畑。
しかし、大分伸びきってしまっている。
思わず屈んで葉の下を覗いてみた。
おお、まだいるじゃない、ちらほらと若芽ちゃんがっ。
この遅い季節でも時間をかけて摘めば、かなりの収穫になるな。
今回は目的が違うので残念することにして、生まれて初めてのワラビの藪漕ぎへと歩みをすすめるのであった(笑)
よし来年は、もうチョット早い時期に収穫を第一義として訪れよう。
160702石保戸12

程なく行くと、山頂直下の壁にぶち当たる。
ここも防火帯てはあるのだが「ぶち当たる」というのが正しい表現だと思う。
思わず他のトレイルを探してしまうほどの急斜面。
あやや、簡単には登らせてくれないのね。
160702石保戸13

もちろんここは直登しかない。
気合を入れて超急登に取りつく。
いやいや、足を開いて大きく逆ハの字でステップしていかないと登れないぞ。
右手に上がる踏み跡よりも、左手のワラビの中のほうがフリクションがとれる。
ちびちびと、そしてヒーコラと身体を上げていく。
すると突然、頭の上の斜面でガサゴソ!
え?なに?  ・・・クマ?
ワラビの藪越しに上部を覗いてみるも、急斜面のため音のするところが見えない。
ほんの10mほど先なのだが・・・
とにかく立ち止まってジーっとしてみる。
・・・・・
すると、女性の話し声がガサゴソとともに聞こえてきた。
あ、人間か、ヨカッタ💦
しかし、何をやっているんだろう。
ガサゴソの音はまだ続く。
音のする方に急登を詰めていく。
「こんにちわ〜」
「あ、こんにちわ」
そこには老年の男性と中年の女性がかがんでいた。
きっと親子なのだろう。
「ガサゴソッ!」
「おお、ワラビですかぁ」
そこでは、大量に摘んだワラビの長さを揃え、新聞紙に包んでいる。
なるほど聞こえていたのは新聞紙に包む音。
「イヤイヤ熊かと思っちゃいました💦」
ここで一同爆笑。
チョットの恐縮の表情がみえる。
量が量なので業者さんかと思ったが、水煮の瓶詰めにして配るそうだ。
毎年来ているとの由。
よし不肖小生も来年の再訪、決定!

しばしの歓談のあと再び急登に取り組むが、もう山頂はあっという間。
斜度が緩んであたりが開けると、防火帯は南の尾根へと直角に進路を変える。
ここは曲がらず、薄いブッシュを払って直進すると、展望のない山頂にたどり着く。
想像はしていたけど、やはり地味なピークである。
160702石保戸14

160702石保戸15

ここは一応、木彫りの山頂標にタッチだけして、先の防火帯まで戻り一本とることにする。
今日はいい山を歩けてるな。
この目の前にある南へ落ちていく防火帯を下るのだが、もうすぐそこで尽きているはず。
何やら少し寂しくなるので、なかなか腰があがらない。
踏ん切りをつけて防火帯に足を踏み入れると、今度は蕗とワラビが混生した斜面となる。
いやいや、ここもかなりの急勾配だぞ。
こんなに「たおやか」にみえる山容でも、直登にトレイルを切るとこんなにもショッパくなるものか・・・
160702石保戸16

蕗とワラビの茎にどいてもらいながら標高を落としていく。
しかし、あっという間に防火林帯はドンづまりとなる。
この突き当りには、左右にしっかりとした踏み跡がある。
ここは右へと道を取り、一旦トラバース道に入って西の尾根に乗り換える。
トレイルは明瞭な作業道だ。
尾根筋を外さないように南へと下る。
160702石保戸17

トレイルはバリルートではあるが快適に足を進めることができる。
しかし、あらかじめ調べた情報では、このまま行くと林道のコンクリート法面の上に出てしまうとのこと。
早めに右手の沢へ脱出ルートを探ることにする。
踏み跡はないものの定石に従い、沢筋を狙って尾根の右手後方へ降り気味にトラバって行く。
谷への斜面は、慎重さを欠かせないほどの傾斜。
細い木枝を掴んで行きたいところだが、体重をかけるとアッサリと折れてしまう。
今日のルートの核心部分である。
160702石保戸18

なんとか降り立ったところは、小さな沢の右股と左股の出合いの場所。
その沢の中間尾根は、ミニチュアながらも屹立している。
バリ専門のヤブ屋さんには、箱庭みたいに思えるとこだろう。
ほっと安堵の溜息を残して小沢伝いに降りていく。
程なく行くと、先ほど別れた指入峠からくる林道にたどり着いた。
あとは分岐で、高橋へ向かう林道を選べばいいだけである。

こんなとこに出てきました。

160702石保戸19


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いやいや今日は、飽きることなど微塵もない良き山行きができました。
一応、管理されていないバリルートではありますが、一般道として開拓しても人気となるのような楽しいトレイルです。
気候もそれなりに暑くはありますが、奥多摩と比べて圧倒的に湿度が違います。
標高1600mちょっとなのに気持ちのいい汗をかくことができました。
そこで車まで戻った小生にご褒美。
持参したクーラーボックスの中から・・・
160702石保戸20

プハ~ッ❤
安心してください
ノンアルコールビールです(笑)
160702石保戸21